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コトラーのマーケティング講義 基本コンセプト300(フィリップ・コトラー)

「ワールドマーケティングサミットジャパン2016」という、経営者・マーケター・マーケティング学者が集まるイベントに出るために、コトラー教授が来日します。 

コトラー教授は「近代マーケティングの父」などと称されているマーケティングに携わる人の先生的存在です。

世の中から賞賛されている特徴として、点在するマーケティングに関する知識をわかりやすく、体系的に編集していることが挙げられます。

とはいえ、学術的な内容で表現も小難しいので、理解するのには時間がかかります。理解しながら読み進める感じなので、理解が低い状態だと読んでてちんぷんかんぷんな内容です。

世の中的に成功していると言われる大企業の事例が多いので、中小規模の企業では自身のビジネスに生かすためのイメージもしづらいです。その背景にある原理原則を捉えて自社に生かせば良いのですが、理解度が低いとそううまくもいきません。

せっかく最新の講義を受けられるので、過去の著書を復習してコトラー教授の理論をインプットしてから挑もうと思い、代表的なものを何冊か読んでから参加することにしました。今日はその2冊目のお話です。

1Pマーケティングがマーケティングを阻害している

「コトラーのマーケティング講義 基本コンセプト300」は、コトラー教授がこれまでたくさん受けてきた質問を本にまとめたものです。質問の内容に合わせて章立てがされており、興味のある領域毎にコトラー教授の考え方を学べる、なかなか良い本です。章立てはこんな感じです。

1.市場とマーケティング
2.マーケティング戦略
3.マーケティングツール(4P)
4.マーケティング・プランニング
5.マーケティング組織
6.マーケティング・コントロール
7.マーケティングの適用領域
8.卓越したマーケティング

いきなりこの著書を読むことはおすすめしませんが、コトラー教授の基本的な考え方をインプットした上で読むと、理解の行間を埋めてくれるような内容になっています。


中でも腑に落ちた話があります。それは、「企業のマーケティングは1Pが幅を利かせているマーケティング部門が担うのはプロモーションだけで、製品、価格、流通チャネルなどの決定に大きな影響力を持つのは他部門なのです」という話です。


マーケティングをする上で押さえるべきポイントとして、4Pという考え方があります。言わずもがなだとは思いますが、Product(商品)・Price(価格)・Place(チャネル)・Promotion(プロモーション)のことです。

この考え方は、市場が必要としている商品を売っていた製品主導の時代に重要だとされていたものです。

つまり、顧客に機能的利便性をもたらす商品を作れるか、大量生産し価値提供しやすい価格にするか、誰もが手に取りやすい流通チャネルを持てるか、そしてそれをどういう方法で顧客に訴求していけば買ってもらえるかを考えて実行することがマーケティングだとされています。


でも実際は4Pのうちの1つ、プロモーションだけに主眼を置かれた組織づくり、マーケターの役割定義がされている状況があります。これをコトラー教授は「1Pマーケティングが幅を利かせている」と言いました。

できた製品をどう訴求するか、それだけを考えて実行するのがマーケティング部の役割になってしまっているということです。当の本人たちもそう思ってしまっている傾向があります。

過去仕事をしてきたマーケティング部を振り返っても納得いきます。マーケティングによって機能分化した組織に横串を刺すという発想ができていないため、このような現状が起こってしまっているのだと思います。

これは、作ることになった商品を決められた予算でどれだけ訴求するかを、経営層がマーケティング部へと依頼する組織構造になっているためだと思います。大きな企業になればなるほど、その傾向は強いと感じます。

顧客が起点なのは変わりない

良いものを安くたくさん生産して、たくさんの人に届ける製品主導の時代は過ぎ、顧客それぞれの欲求に合わせた商品づくりやコミュニケーションをしていく顧客主導の時代がきて、顧客が企業と一体となってマーケティングしていく価値主導の時代が来ていると言われています。

でも、顧客主導のマーケティングが事業への貢献をしていくことはまだまだ変わらないと思っています。できている企業の方が少ないので余地は多分にあります。

1Pマーケティングが幅をきかせているので、顧客主導のマーケティングができるだけで、商品を売ることはまだまだできると僕は思っています。

データの活用が叫ばれていますが、マーケターにはそれを反映する先が無く、ただプロモーションにいかすためだけの活用に留まってしまっていることが多いと思います。


顧客からのフィードバックを生かす先をマーケターが持てていないため、いつまで経っても1Pマーケティングが行われています。

商品や価格やチャネルへ顧客からの反応を還元していくことで、より良いマーケティングを実現できると思います。


大きくない企業の方が組織を柔軟にか変えやすいところを考えると、中小規模の企業の方がこれからは勝機としていけるのではないかと思ったりもするわけです。