先週、帰省した際に息子(3才)を連れて地元のイオンに行きました。
子どもの遊べるスペースがあるということで、時間をつぶしにそのキッズスペースへ向かいました。
柔らかい素材で仕切られた10m四方くらいのスペースには、10数人の幼児と付き添いの親たちがいました。
「比較的同じくらいの年齢の子どもが多いから、危なくなさそうやな。しばらくこれで時間を稼げる」と安心して、息子を送り出しました。
小さなすべり台を見つけて、一直線にそこへ向かう息子。2,3回登ってはすべりを繰り返す。あとはひたすらその様子を眺めておけばいいだけだと安心していると、息子が急にキッズスペースから飛び出していきました。
向かった先にはガチャガチャマシーンがひしめき合ったスペースが。「おい、こんな近くに置くなや!」と運営へツッコミをいれる。でも瞬時に「これは商売上手やな」といつもの癖でマーケティング脳が動き出す。
結局、遊ばせにいったものの、遊んだのはものの数分。ほとんどの時間をガチャガチャで過ごすことになりました。
メディアの使い方わかっていますか?
イオンのキッズスペースは、子どもの遊び場をつくることで親の休憩場所を作れる、顧客満足を高めるためのコンテンツだと思っていました。
でもそれは、子どもの欲求を掻き立てる商品を売るためのメディアとしての役割としても機能していました。
人を集めるコンテンツを用意することができれば、そこにはメディアとしての価値が生まれます。そのコンテンツと、それを媒介して紹介される商品との親和性が高ければ高いほど、売上に貢献できるメディアになります。
メディアの扱い方について、10年以上広告に携わってきてずっと感じていることがあります。それは、メディアの集客力だけに頼り、商品との親和性を如何に高めるかを意識できていない場合が多いということです。
あたかも集客力のあるメディアで広告をすることが正しい広告だと思っているように感じます。それを如何に安く、より良い枠を押さえられるかが広告代理店の仕事のような側面があります。
まず考えるべきは、メディアが提供するコンテンツと商品との親和性がどれだけあるか、ということです。なぜなら、メディアのコンテンツに寄ってくる人は、コンテンツに興味があってそこに居るのであって、商品の情報を知るために来ているわけではないからです。
そしてもう一つ重要なのが、メディアが提供するコンテンツに寄ってきているターゲットの文脈に合わせた広告クリエイティブをつくることです。
イオンの例でいくと、ただガチャガチャの機械がフロアに数台並んでいるだけではクリエイティブができているとは言えません。
数十台のガチャガチャをひしめき合わせることで、その魅力が一気に高まります。まるで今遊んでいるキッズスペースと同じように、自分を楽しませるコンテンツのように目に映ります。
そうすることで、衝動を抑えることができない子どもは一目散にそこへ向かっていきます。そして、キッズスペースへ戻そうとする親に対して泣きわめき、その場限りの約束を取り付け、目的を果たします。
まるで罠にかかった気分です。
表現は不適切ですが、顧客の心理や行動を読み、商品購入に至らせる罠を仕掛けていくことがマーケティング担当者の仕事であると言えます。