状況が変わったらターゲットを見直してみればいい、というお話。
出張前日が祝日だったので前乗りして温泉宿に宿泊しました。翌日の訪問先の最寄り駅まで電車で10分くらいの場所に、二日市温泉という温泉街があったので、そこに行くことにしました。
日中は天神のコワーキングスペースで仕事をして、夕方から宿へ向かいました。西鉄電車に揺られること10数分、西鉄二日市駅に到着。
駅を降り立つとちょっと田舎の住宅街のような感じ。駅まから宿までは徒歩で20分程度で行ける距離だったので散策も兼ねて歩いていくことにした。
駅の周辺には居酒屋がぽつぽつとあり、改装中の店舗などもあって、賑わいを想像させる。駅から離れ、住宅街を通り抜け、幹線道路沿いを10分ほど歩くと、その日の宿「大観荘」が現れた。
外観から味があり、景気の良い時代につくられた旅館という感じが溢れている。車止めのある玄関から入ると、目の前に広がる広々としたロビー。昭和を感じさせるテーブルとソファーには老人が何人か座り談笑している。
流木で作ったトカゲ風のオブジェや、ショウケースに収められたトラの剥製、大きな壺など、絵に描いたような旅館の様子がそこには広がっていた。
「よし、きたこれ」非日常を味わいたかった僕は、このいかにも寂れたノスタルジックな空間に、心の中で小さくガッツポーズをした。
おそらく看板娘だと思われる受付の中年女性から、透明の四角い棒に付けられた部屋の鍵を受け取る。案内人のおじさんに連れられ、赤い絨毯の敷き詰められた細い廊下を進む。右手には”一応ある”程度の庭があり、左手にはこれまたショウケースに壺が並んでいる。
廊下の先の階段を登ると、目の前に旅館の扉と言わんばかりの木製の扉が現れた。ここが僕の部屋、215号室だ。
弱々しいドアノブに鍵を差し込み180度回転させる。扉を開くと小上がりがあり、右手にはおそらく布団がしまってある押入れ、左にはトイレ、目の前のふすまを開くと期待を裏切らない畳の部屋。
部屋の真ん中には大きな木製の机と座椅子、机の上にはお茶菓子。脇には湯沸かし器とお茶をつくる道具一式。床の間があり、そこにはお約束の通りの掛け軸と壺。もちろん浴衣完備。
外に面したところに、縦に2畳くらいの板間があり、小さな机と対面に置かれている2脚の椅子。旅館の部屋を書いてください、と言われた描く部屋がまさに目の前にあった。
寂れてなくなっていく場所の典型
夜は近くの居酒屋に出向き、地元の人とのコミュニケーションを楽しんだのですが、祝日の夜だからなのか20人程度入れる店内に客はなく、3時間程度ずっと貸し切り状態。
聞くと、観光客も減り、地元の人が食べに来ることの方が多いようです。たしかに周辺は住宅街なので納得。
近年では旅館が潰れて跡地にマンションが建っていると言っていました。なんかさびしい話ですが、これが現実なんだろうと思いました。
店主は「若い人が温泉に行かなくなった。他にレジャーがたくさんあり、温泉にわざわざくるような時代じゃなくなった」と言ってました。でも、温泉好きな人は多いし、そこの戦いに勝てていないだけなんだと僕は思っています。
確かに温泉街と言えるような風景はなく、住宅街に温泉宿がまばらに有るような感じの場所だったので、非日常を味わいに来た旅行者にとっては物足りない温泉地であるのは間違いありません。
ただ、その土地の良さを味わいたいという旅行に対する考え方も変わってきている(本来の考え方に帰着してきている?)と思います。
1300年前に発見された温泉の源泉かけ流し、その土地で取れた新鮮な食材を使った料理、ノスタルジックな空間でのくつろげる時間、売りになるものは多分にあると感じました。
僕みたいに出張者を招くには市街地からもほど近く、ただ寝るだけの蜂の巣のようなビジネスホテルよりはくつろげます。
家族連れやカップルでは周辺施設の寂しさから物足りない感じを受けると思うので、ビジネスパーソン向けにもっとPRしていくのはどうかと思いました。
ノスタルジックな空間は都会で働くビジネスパーソンの癒しにはなると思います。観光でわざわざ行こうとは思いませんが、出張の間の癒しとしてはとても良い場所だなと思ったので、また福岡出張の折には足を運んでみたいと思ってます。
p.s.
1泊朝食付きで8,000円とかなりオトクなプランでした。朝食もしっかりした和定食でビジネスホテルに止まるよりも満足度が高かったです。