半世紀で成し得なかったマーケティングの進化を起こす。
7月8日に行われた電通デジタルの発足記念セミナーで、電通デジタルCOOの丸岡吉人さんがプレゼンした際の話です。
「黒電話がスマートフォンに進化したのと同じくらいの進化をマーケティングはできているのか?」ということへ警鐘を鳴らし、それを電通デジタルで実現していくというような話です。
プロダクトと概念とを比較対象にしているので、なんとも違和感を感じてしまいます。キャッチーにするための広告屋としての訴求の仕方なのだとは思いますが、事業を俯瞰したコンサルティング領域への舵切りも行っていこうとしている企業の発言としては、ロジカルではなくいかがなものかと感じました。
マーケティングは、セールスをしやすくすることです。概念に進化するもなにも無いと思います。テクノロジーの進化に対応して、得られるはずのマーケティング機会を活かしきれていないのは確かだと思います。それをもっと活用していけるようにする、ということであれば納得はいきます。そうあるべきだと思います。
丸岡吉人氏が「マーケティング活動において、もっとできることがあったのではないか?」というお題で業界関係者と話し合いをしている中で、出てきた意見が紹介されています。
・顧客体験を刷新するアイデアはあったが、システム開発と連動できなかった
・マーケティングシステムを導入したが、上手く使えていない
・顧客獲得を最適化したが、獲得後のCRMまでに投資ができず、成長が鈍化した
・個々のマーケティング活動は進化しているが、全体の最適化はできているのか
話し合いをしている相手はおそらく、名だたる企業の宣伝担当の方などが中心となっているはずです。根本的な問題は、マーケティングを体系的にとらえて、本質を理解できていないことだと思います。
もしできていれば、やりたいことを成し遂げるために必要なテクノロジーの活用に取り組めます。施策有りきでの検討や提案が行われているため、上記のような状況になっていると思います。
これらの課題の原因は、提案側、つまり広告代理店にあると思います。本来、クライアントのマーケティング課題とそれを実現するための施策の橋渡しをする役目のはずの広告代理店(主に営業担当)に、テクノロジーへの理解がありません。
媒体の知識と企画力、クリエイティブ開発力のみで課題解決を図っていることが問題です。テクノロジーを活用したシステムなどを提供するベンダーサイドもまた、マーケティング知識が乏しいために、自らの活用法を直接クライアントへ伝えることができていません。
マーケティングを理解して、体現できている企業であれば、上記のような課題は生まれていないと思います。施策に頼り、流行りモノに飛びつき、わかったような気になっているプレイヤーが多いため、起こっている事態だと僕は思います。
日本のマーケティングを変えるポテンシャル
日本のデジタルマーケティングを牽引する、という業界からの期待も背負って発足した電通デジタル。ITコンサル、アナリストなどの人材や、アドテク企業からの引き抜きも積極的に行っているようです。
お金を積んで各分野のスタープレイヤーを集結させるのも大切だと思いますが、おそらくバックボーンが違うことによる認識の違い、信じていることの違いはあると思います。結局人に依存し、組織としての力は発揮できない状態に陥ってしまう気もしています。
そもそもマーケティングへの理解を全社で共有できていなければ、各施策が統合的に機能することは難しいと思います。ただの寄せ集め集団になってしまうのではないかと心配しています。
本来であれば、電通本体の人材を育成していくべきだと思うのですが、グループのweb広告代理店、他社からの引き抜きで組織を構成しています。広告会社がマーケティング支援パートナーとして存在していくのであれば、デジタルへの理解と実践がなければいけません。
電通本体の社員はデジタル領域を切り離されて、今後ますます広告代理店としての様相を見せていくことになるのでしょうか。なんかそれも寂しい感じがします。
ただ、影響力を考えると、電通以外に業界の認識と状況を変えられる会社は居ないと思っています。是非とも形骸化せず、日本のマーケティング底上げを担う旗振り役として活躍してほしいと願っています。
テマヒマはテマヒマのやり方で草の根分けながら底上げに取り組んでいきます。
参照:http://markezine.jp/article/detail/24771