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鬼十則

今の広告業界の形を作った広告の鬼をご存知ですか?

昨日、電通マンの「鬼」気くばりの話題を取り上げました。「鬼」というか装飾が用いられているのは有名な「鬼十則」という指針からだと思います。

「広告に携わる人は全員知っているのではないか?」と思うほど有名な10個の指針です。これを知らない広告会社の人間がいるとしたら、モグリではないかと思います。

これは戦後の困難な時代に電通の4代目社長を勤め、当時忌み嫌われていた広告代理店を世の中を動かす存在へと変貌させていき、マス広告始め今の広告代理店の仕事の形を作り上げた吉田秀雄さんが作ったものです。


就職活動をしている時に、広告代理店にいる先輩から教えてもらい、この「鬼十則」を知りました。最初見た時は、わかりにくい表現もあり、「就活で聞かれる可能性があるから覚えておこう」くらいの感じでした。

今改めてこの「鬼十則」を見てみると、広告に携わる者というよりも、ビジネスに関わる全ての人にとって必要なことが詰まっていると感じます。

吉田秀雄さんの生涯とその激動を綴った伝記「われ広告の鬼とならん―電通を世界企業にした男・吉田秀雄の生涯」という本があります。

そこでは、広告代理店のビジネスモデルを確立し、その社会的地位を作り上げた男の壮絶な人生が語られています。

その偉業もさることながら、吉田秀雄さんという方の人情味溢れる人柄に引きこまれます。最後の葬儀のシーンでは涙してしまうくらいです。是非TBSの日曜ドラマ枠でやってほしいと思います。

吉田秀雄さんの「鬼」気くばり


「電通マン36人に教わった36通りの「鬼」気くばり」では吉田秀雄さんのことをこのように紹介されています。

当時、日本の商店の軒先に「押し売り・広告屋お断り」という張り紙が掲げられていた時代に、広告業をビジネスとして成立させようと志した吉田は、まず一流の人材を集めるべきだと考え、破格の初任給を用意し、彼の眼鏡にかなう「八方への気くばり」ができる人間を片端から採用した。

電通マンは吉田の教えに従い、他のどんな業種の会社員よりも高いプライドと低い腰を持ち、その腰の低さと気くばりによって、電通を世界最大の広告代理店にまで押し上げた。

得意先を接待する際は、必ず靴を脱いで上がる料亭に連れて行き、その店に馴染みの靴屋を密かに招いておきます。そして食事の合間に客の靴の寸法をこっそり測らせ、数日後にその人の足にピッタリのサイズの靴をプレゼントして相手を驚かせたそうです。

また、銀座にある洋品店には、吉田さんが人に送るプレゼントの売上だけで生計を立ているお店があったそうです。得意先や部下にプレゼントしたゴルフバッグは生涯で1000個を超えるとも言われています。

まさに「鬼」気くばり。

何を成し得るのか、その気概があるのか

吉田秀雄さんの生涯を描いた伝記「われ広告の鬼とならん―電通を世界企業にした男・吉田秀雄の生涯」。このタイトルの「われ広告の鬼とならん」ですが、「鬼とならん」とは、あえてそうするという意味が込められていると思います。

ご本人としては人情味があり、気くばりの人でした。でも広告というビジネスを日本に作るために、「鬼」となることを決めた男の決断がそこに見えます。


忌み嫌われていた広告の仕事を、今では新卒就職人気ランキングの上位企業の常連になるほどの魅力的な存在にする基盤を作ったのは間違いなく吉田秀雄さんだと思います。(今年は電通が1位でしたね)

吉田秀雄さんのことを知り、広告の仕事について魅力を感じてきました。スケールが大きすぎて実務とのギャップは多々有りますが。

今では広告代理店の仕事に対して苦言を呈することも多いですが、本心では「そんなもんじゃないだろう」、「先人たちが切り拓いてきたように、新しいビジネスモデルを確立していって欲しい」という気持ちがあります。


戦後当時は広告業を社会に認められ必要とされるビジネスとして確立させるために集結した、ベンチャー精神溢れる優秀な人間の集団だったのだと思います。

今では巨大な企業となり、今いる人たちがどれほどその気概を持って自分たちの仕事に向き合っているのかは疑問です。

大企業になってしまった今、それを望むのは難しいのかもしれません。でも広告業界でそれをしていけるのは、「鬼十則」を染みつかせた電通の人たちしか居ないとも思っています。

吉田秀雄という人物には、広告というもの、ビジネスというものが凝縮されています。


鬼十則

仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。
仕事とは、先手々と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。
難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。
取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。
周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。
計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚みすらない。
頭は常に全回転、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。


p.s.
吉田秀雄さんが唱えていた「広告は科学と芸術」。これが最も刺さっている言葉です。


参考:電通マン36人に教わった36通りの「鬼」気くばり

   公益財団法人吉田秀雄記念事業財団 http://www.yhmf.jp/outline/about/biography.html