うちの近所に家族で足繁く通う焼肉屋さんがあります。
卸直営のためおいしいお肉を安く食べられます。そういうお店は巷にもちょこちょこあると思いますが、このお店は飲み物もサイドメニューも安いとんでもないお店です。ビールは500円以下、マッコリはグラスに並々継がれて300円です。家族3人でお腹いっぱい食べても5000円くらいというなんとも驚きの会計。
客層は会社帰りの人や、家族連れも多く、大衆的な感じです。決して賑やかな通りに有るわけではありません。住宅街にぽつんとあるので、たまたま見つけて入る客はあまりいないと思います。でも、いつも客でうめつくされて、常に回転しています。毎回、入店を断られているお客さんを見かけます。
最近では月に1,2回ですが、一時は週1で通ってました。おそらく他のお客さんも常連さんが多いと思います。なんせ新規のお客さんがどんどんと入ってくるような立地ではないからです。
店舗ビジネスに有効なマーケティング
店舗ビジネスは立地で決まると言われています。どれだけ人の流れを待ち構えて受け止められるかが、店の生死を分けるといっても過言ではありません。
でも立地の良いところは家賃が高く、なかなか手が出せません。そのため、ダイレクトレスポンスマーケティングを学んでいる店舗経営者は多いです。
商圏が決まっているので、自ずとターゲットは限定されます。周辺のポストにチラシを撒き、最寄り駅からお店までの導線上でチラシを配布して、お店の存在をターゲット(近辺の生活者)に知らせます。
そこで、食べに行ってみたいと思わせるようなクリエイティブと、今晩いってみようかと思わせるオファー(取引の条件)を用意し、集客をします。
来店したお客さんに対して満足のいくサービスを提供し、次回来店を促すためのクーポンやスタンプカードなどを渡します。
ダイレクトレスポンスマーケティングを駆使しているお店は、顧客の個人情報を取得し顧客リストを作成します。そして、リストに対してDMを発送します。次回の訪問を口を開けて待つのではなく、自らのコントロールによって集客をしていきます。最近ではLINE@を駆使することでコミュニケーションのしやすさが格段に上がっていると思います。
スタンスを磨け
でも、この焼肉屋さんはまったくそんな手法をとっていません。では何がこのお店をこれだけお客さんで溢れかえる繁盛店にさせているのか?
答えはシンプルです。「安くて、旨い」。客の求める最大のベネフィットを提供し続けているからです。他所で食べると1皿2000円は下らない厚切りのタン塩が980円。暑さ1cm程度で、素人目にも新鮮だとわかるピンク色をしています。噛み心地が良く、ボリュームがあるので口の中いっぱいに味が広がります。
その他のメニューも1皿500円前後と家族連れでも手を出しやすい価格帯です。しかも量は1皿100〜150gくらいあります。最近は1枚ずつお肉を食べられるお店が流行ってますが、ちまちませず、がっつりと食べられます。
そして、飲み物もファミレスレベルの価格帯。おまけにサイドメニューも安く、半端ない量です。例えば、ナムルの盛り合わせは3種のナムルが山のように積み上がっています。標高10cmくらいでしょうか。それでも価格は300ー400円程度。複数人でシェアしてちょうどな量なので、大人数で来店するお客さんも少なくありません。
立地が重要と言いましたが、徒歩5分圏内に焼肉屋さんは何店舗もあります。ある意味、焼き肉レッドオーシャンとも言えるエリアです。でもこの店だけが流行り続けている理由が、これだと思います。
顧客の欲求を満たすためにこのお店がやっていることとして、最もインパクトのあることは原価を下げるです。そして、低い客単価を補うための回転率を上げることとの両輪で成り立っていると思います。
回転率を上げるために、店員の人たちの動きは常にテキパキしてます。お皿を下げるスピード、追加注文を取るスピード。キッチンが料理を提供するスピード。どれも無駄がなく、次々と注文をしてしまいます。
普通のお店が2時間〜3時間くらいの滞在時間だとすると、このお店は半分くらいだと思います。実際、僕ら家族も1時間程度で食事を済ませることが多々あります。長く居ても1.5時間くらいです。
量を多くすることで、満腹に到達する時間を早くしていることも、回転率を上げるための戦法なのかもしれません。
店舗経営をするならこんなお店づくりをしてみたいですよね?お客さんのことを第一に考えて、それを実現するために自分たちが何をできるのかを考えて実行すれば、必ず繁盛店は作れます。
それには手法ではなく、スタンスが大切です。このスタンスを啓蒙していくのも、マーケティング担当者の仕事だと言えます。