Netflixがアカウント登録不要の無料視聴を始めました。
自粛期間で登録者は増えたものの鈍化してきたところに次の手を打ってきた格好です。
無料オファーは最強のオファーです。でも、原価のかかっているビジネスや投資回収期間を長く設定できない企業には不向きです。
なぜなら集めたユーザーのうち8割は無料利用だけだからです。でも、残りの2割が顧客になってくれるだけでも十分に採算を取っていける状況だからやる価値があります。無料商品の利用者をあえて「見込み客」と定義すると、見込み客の量は爆発的に増やせるからです。
取得した個人情報を元に無料のプロモーションをその後掛け続けられることで、新規顧客獲得のコストを下げていくことができ、かつ顧客数も増やしていけるメリットがあります。
つまり、見込み客になってもらってから、顧客になってもらうまでに時間がかかり、手間もかかるので、それをやり続けられる体力のある事業でしか無料オファーの収益化をやりきれないということです。
小さな規模であっても、webサービスなどインフラコストしかかからないような事業であれば、無料でばらまくのは有りです。見込み客のサポートなどもしない条件にしておけば、管理コストを下げることができ事業を圧迫することはありません。
顧客には手厚く、見込み客には手薄で。この使い分けをすることで、顧客基盤を形成していき事業が安定化していきます。
損失回避という人間心理
人は少しでも所有すれば、それを手放したくなくなります。それが「損失回避」という心理特性です。
部屋選びをしていて、候補リストにある部屋が他の人に契約されてしまうと「取られた!」と感じます。自分のものでもなんでもないのに、ただリストに入れて候補としていただけでも、自分のものだという認識をしてしまったりします。
こんな実験があります。学生の半数に学校のロゴマークの入ったマグカップをプレゼントしました。マグカップをもらえなかった半数に「マグカップがいくらなら買うか?」という質問をしたら平均は300円程度でした。
マグカップをプレゼントされた半数に「いくらならそのマグカップを売るか?」と質問をしたら平均は700円程度でした。
つまり、一度でも所有することによって、手放したくないという気持ちが働き、一般的に感じる相場価格よりも高い値づけでないと手放したくないと感じた人が多かったということです。
なので、我々マーケターは、見込み客に商品を所有してもらう機会を作ることが仕事だと言えます。
ただし、日用品など消費して定期的に買い換える商品では効果的に使えない方法です。損失回避の特性を活用できるのは、今まで買ったことのない類の商品や高額で購入を躊躇するような商品の場合です。
ぜひ、商品を所有するという体験を作り出してあげてください。