ディスプレイ広告というのは、webサイト内の広告枠に表示される画像もしくはテキストの広告のことです。配信の仕方によって興味の薄い潜在層から検討中の顕在層までを狙える広告です。
そのため、使い方を誤ると期待通りの成果を出せないどころか、大きな損失を出してしまう可能性もある広告です。でも、安心してください。正しい使い方を知っていれば、とてつもなく頼りになる武器となります。
目次
ディスプレイ広告の種類
純広、アドネットワーク、DSPなどいろいろありますが、これらは全てディスプレイ広告です。webサイト内の広告枠は基本的にディスプレイ広告に分類されると考えてください。
純広とは
指定して買い付けができる特定のサイトの広告枠のことです。媒体・広告面・期間などを指定して買い付けます。広告枠ごとに料金が決められています。メディアレップと呼ばれる取次業者を経由して買い付けるのが主流で、小規模なメディアであれば広告主が直接取り引きすることもできます。
最近では純広を利用すること自体が機会として減っています。理由としては、コスパが悪いからです。広告枠への掲載に対して課金が発生するので、クリックが発生してもしなくても、そこから商品が売れても売れなくてもお金がかかります。従来からの広告媒体と同じ考え方の広告です。
以前であればYahoo!のブランドパネルと呼ばれるTOP面の広告枠は純広の王様とも言える広告枠だったので、メディアレップを介して直接買い付ける方法でしか広告掲載できませんでした。でも、それだけでは売りさばけなくなってきたため、今は運用型広告として誰でも出稿が可能になっています。
参考:Yahoo!ブランドパネル
アドネットワークとは
ネットワークされているwebサイト上の広告枠を買い付ける方法です。リスティング広告と同じクリック課金を採用している媒体なので、運用しながらパフォーマンスを調整していけます。配信条件・入札金額・予算などを設定して広告掲載をします。
代表的なアドネットワーク
Googleのネットワークしているwebメディアへ広告配信できる「GDN」、Yahoo!のネットワークしているwebメディアへ配信できる「YDN」です。その他にもいろいろありますが、基本的にはこの2つで事足ります。初めてディスプレイ広告に取り組むのであれば、まずGDNから始めてみましょう。
理由としては、2つあります。管理画面の使い勝手とデータ精度です。GDNの管理画面はGoogleのリスティング広告と同じなので新たに始めやすく、YDNの管理画面は残念ながら使い勝手が悪いです。また、GDNはGoogleの保有するweb上のデータを元にターゲット設定ができるので、データ精度の信用度が高いのもおすすめできる理由です。
参考:ディスプレイ広告はサイト内に配置されている画像
DSPとは
広告配信のための仕組みと覚えていただければと思います。独自のオーディエンスデータや配信データの活用によって、より最適な見込み客に対して広告配信ができるようになるというツールです。また、1インプレッション毎にリアルタイムで入札をかけることによって、広告したい相手により安く配信をするという特徴を持っています。
ただ、アドネットワークを含めたメディアネットワークから広告枠を買い付けるので、DSP事業社側に支払う目に見えないコストを考えると、さほど利用価値は無いように思います。
アドネットワーク配信プラットフォーム側のデータ活用が進んでいることと、ニュースアプリ系など独自の広告枠を囲い込んでいる大型メディアが台頭してきているので、DSPを介してディスプレイ広告を配信するメリットは、今ではそこまでない印象です。
ディスプレイ広告のアカウント構造について
広告運用を始める時につまづくのがアカウント構造です。使う媒体によって仕様の違いはありますが、①広告キャンペーン、②広告セット(広告グループ)、③広告の3ステップになっています。
構造としては、ツリー状になっていて、1つのキャンペーンの中に複数の広告セットが設定できて、1つの広告セットの中に複数の広告が設定できるという形です。とりあえずは、広告配信のための設定の順番だと考えていただければ大丈夫です。
①広告キャンペーンで決めること
広告キャンペーンで決めることは主に目的と予算です。露出を増やしたいのか、クリックを増やしたいのか、コンバージョンを増やしたいのか、動画視聴を増やしたいのかなどが目的となります。そして、そのアカウント全体で使う予算を設定します。これ以上は使わないという設定をしておかないと、1日で1ヶ月分の予算を使ってしまうような事態も起こります。
②広告セット(広告グループ)で決めること
広告セット(広告グループ)で決めることは主に期間とセグメントです。いつからいつまで配信するのか、どんな配信対象に対して広告するのかを決めます。セグメントとは広告を配信する対象者の塊のことです。セグメントについてはこの後詳しくお話します。
③広告で決めること
広告で決めることは広告クリエイティブとランディングページです。どんなクリエイティブでどのページへと誘導するのかを決めます。
複数の目的があれば、キャンペーンを複数立てます。見込み客との初期接点を増やす目的であれば、インプレッションやクリックを最大化させる目的のキャンペーンを作ります。複数のセグメントがあるなら、広告セット(広告グループ)を複数立てます。広告は複数同時に配信してテストをしていくので、基本的には複数の広告が1つの広告セット(広告グループ)に存在する形となります。
ディスプレイ広告で必ずやるべき配信設定
ディスプレイ広告には大きく2つの配信方法があります。ターゲティング配信とリターゲティング配信です。媒体によってターゲティング配信をオーディエンス配信と言ったり、Googleのディスプレイ広告であるGDNなどではリターゲティング配信をリマーケティング配信と言ったりしますが、同じものです。
ターゲティング配信は、セグメントを指定して広告配信をする方法です。セグメントというのは特定のジャンル分けがされたターゲットの集団だと考えてください。
リターゲティング配信は、広告に反応してLPに訪問したり、サイト内の特定のページへ訪れたり、ページ内で特定のアクションをしたりした人に対して、広告を配信するという方法です。自社のページに訪問経験のある見込み客の集団に対して広告配信することができます。
ターゲティング配信の種類
ターゲティング配信には、ブロード配信、デモグラフィックターゲティング配信、インタレストターゲティング配信、プレースメントターゲティング配信、アカウントリストターゲティング配信、類似オーディエンス配信などがあります。
ブロード配信の特徴
ブロード配信とは、ターゲティングをしない配信方法です。とにかく、広くたくさんの人に広告したい場合に使用します。webメディアでマスアプローチをしたい場合に使われます。特徴として、配信単価が安くなることが挙げられます。
理由は競合性が低くなるからです。基本的にweb広告の配信単価を決めるのは、自社の広告のクリエイティブの良し悪しと、他社の広告入札単価です。ターゲットを絞れば絞るほど競合する可能性が高まり、入札単価を上げなければ広告配信できなくなります。
なので、誰に出してもいい条件だと競合しない枠に対して、安くどんどん配信され、結果的にクリック単価が安く抑えられ、CVRの高いLPがあれば最終的な獲得単価も安くなるということです。ターゲティングしていないのでCVRは低い傾向にあります。
デモグラフィックターゲティング配信の特徴
性別・年齢・エリアなどデモグラフィック情報と呼ばれる客観的に示せる情報を元に、広告するセグメントを決める配信方法です。自社の商品の購買層が性別や年齢で区切れる場合は設定をしておいてください。ただ、年齢を絞りすぎないようにしてください。配信対象となるセグメントを絞れば絞るほど、競合性が高まりクリック単価が高くなってしまうからです。
なので、ターゲットを絞るというよりは、顧客層ではないデモグラフィック属性を持っている配信対象を除外するという目的で使うようにすることをおすすめします。
インタレストターゲティング配信の特徴
特定の分野の情報に興味関心のある人をセグメントにする配信方法です。検索キーワードやwebサイトの閲覧履歴、アクション履歴などを元に選ばれます。ダイエット商材を扱っていれば、「下半身痩せ」「楽して痩せる方法」「最新のダイエット」などのキーワードで検索している人や、「健康的な食事について」「自宅でできるエクササイズ」「今話題の痩せる食材」などの記事を閲覧している人が配信対象者となります。
プレースメントターゲティング配信の特徴
特定のメディアをセグメントにする配信方法です。特定のジャンルを指定して、それに当てはまるサイトをセグメントにして広告配信ができます。また、自社の商品の見込み客は訪れるだろうサイトを把握していて、そのサイトにアドネットワークに提供している広告枠があれば、そのサイトを指定して配信することもできます。
アカウントリストターゲティング配信の特徴
自社で保有している見込み客や顧客のメールアドレスを利用して、すでに情報を取得できている人をセグメントにする配信方法です。元となる情報の精度が高いので、効果的に使えるケースが増えています。SNS広告などでは特定のアカウントのフォロワーをセグメントにできるので、競合アカウントのフォロワーや自社の商品と親和性のあるメディアアカウントのフォロワーなどをセグメント化して、広告配信することでより高い反応を期待できます。
類似オーディエンス配信の特徴
作成したオーディエンス(セグメント)のユーザーと近い行動履歴や趣向性を持っている人をセグメントにする配信方法です。購入者の類似オーディエンス配信をすることで、顧客に近いユーザーをweb上で探して配信することができます。類似度を設定することで拡張度合いを調整できるのですが、あまり広げすぎると元データとの関連性も薄れていくので、最初は類似1%程度で設定してみてください。これは設定したオーディエンスデータと近い上位1%を対象とするということです。なので、まずは関連性の高そうなところから始めて、反応を見ながらより多く配信したければ、類似上位2%3%と増やしていくのがおすすめです。
リターゲティング配信の種類
リターゲティング配信は、一度サイトやLPに訪問した人を対象に広告配信できるという配信方法です。
考え方としては、特定のURLに訪問した人やwebサイト内で特定のアクションをした人の情報をリストとして貯め込んで、そのリストを配信セグメントに設定することで、1度訪問した人たちに対して広告配信ができるという仕組みです。
訪問地点によってリストを分けて作成できるので、フォーム離脱ユーザーリスト、LP訪問ユーザーリスト、LP長期滞在ユーザーリストなど、見込み客の行動に合わせたセグメントを作ることができます。
フォーム離脱ユーザーリスト
申し込みフォームまで来たことのある見込み客のリストです。買う寸前まで来ていた方なので、リターゲティング広告によるリマインドによって、改めて購入を再検討しに戻ってきてくれる可能性が高いと考えられます。必ず設定するようにしてください。自社にとって最も優良な見込み客になるので、入札単価はこれでもか!というくらい張ってください。
LP訪問ユーザーリスト
ランディングページへ来たことのある見込み客のリストです。興味を持ってページへ訪れた方なので、リターゲティング広告によるリマインドによって、改めてランディングページへ商品理解をしに戻ってきてくれる可能性が高いと考えられます。興味がなく離脱した人もリストには含まれているので反応率は高くないですが、ターゲティング配信によって新たな見込み客を集めに行くよりは、可能性の高いセグメントになるので設定しておいてください。
LP長期滞在ユーザーリスト
ランディングページへ来たことのある見込み客の中で、特定の秒数滞在していた人のリストです。タグマネージャーなどでのタグの制御が必要になりますが、ランディングページに来た瞬間離脱した人を除外することができるので、見込み度の高いリストを作ることができます。LP訪問ユーザーリストを使っていて、配信はされるけどあまり成果がよくない場合に活用できます。
ただ、広告出稿が少なく集められているクリックの数が小さい内はあまり細かくリスト構築をしない方が得策です。配信対象者が少ないと他社との出稿機会の奪い合いになるので、入札単価が高騰しがちだからです。配信機会も少なく、結果的にインパクトのでない広告になってしまいます。
なので予算規模が大きくない場合は、スルーしておいて構いません。
ディスプレイ広告の広告フォーマット
画像のみで構成された通常バナー、画像とテキストで構成されたレスポンシブ広告、SNSやニュースサイトに配信するインフィード広告の3つがメインどころで、最近では動画バナーも普及してきています。
通常バナーとは
webサイト内にある四角の広告枠で配信される広告です。元々はページ上部やページ下部のスペースを利用した横長の広告枠が主流だったので、まさしくバナーと言える広告枠でした。Yahoo!のブランドパネルを筆頭に、ページ右側のカラムの目立つ位置に少し横幅のある正方形に近いレクタングルというサイズの広告枠が主流となっていきました。なので、横長のバナーは減っている中、未だにバナー広告という呼び名が使われていたりします。
レスポンシブ広告とは
よりクリエイティブを作りやすくするために作られたディスプレイ広告の形式です。通常バナーの場合、広告枠に合わせて複数のサイズ展開をしなければいけません。そこで作る手間やコストが発生するので、あまり頻繁にクリエイティブの入れ替えがしづらい状況がありました。レスポンシブ広告が登場し、画像とテキストをそれぞれ入稿するだけで広告枠に合わせて組み合わせを自動で作ってくれるようになったことで、手軽にディスプレイ広告の配信に取り組めるようになりました。
インフィード広告とは
SNSやニュースアプリの投稿フォーマットに合わせた広告フォーマットがインフィード広告です。画像とテキストで構成され、他の投稿に紛れる形で広告露出できます。そのため、見込み客の反応を取りやすい特徴があります。でも、広告だと思われるとクリックやタップしてLPへ遷移してくれたとしても、すぐに離脱されてしまいます。なので、インフィード広告を出す場合は、必ず記事LPとセットで入稿してください。
記事LPとは商品紹介がメインではなく、なんらかの見込み客の興味を引く情報をメインにしたLPです。気軽な気持ちで広告に反応した人が、記事を読み進めるうちに、意識の変化と態度の変化が起こり、落とし所となっている商品の購入を検討してしまうような場所です。SNSやニュースアプリを見ている人が、広告だと意識せずに読み込めるようなコンテンツづくりが大切になってきます。
ディスプレイ広告運用のコツ
基本的な方針は、自社の商品に興味を持ちそうな見込み客との初期接触をたくさん作って、リターゲティングでリマインドしていきます。
そのために、まず設定すべきはリターゲティング配信です。
ディスプレイ広告の運用準備
- フォーム離脱ユーザーリストの作成
- LP離脱ユーザーリストの作成
- リターゲティングキャンペーンの設定
- リタゲ用広告クリエイティブの入稿
次に、リターゲティング配信用のリストを貯めるための広告の設定です。
- ターゲティングキャンペーンの設定(おすすめはインフィード配信)
- ターゲティング用広告クリエイティブの入稿(おすすめはインフィード→記事LP)
web広告活用がまだ浸透していない業界であれば、通常バナーでのターゲティング配信もまだ効果的に機能するケースもありますが、近年では通常バナーは「THE広告」過ぎて反応する人が少なくなっています。なので、Facebookやニュースアプリなどのインフィード面で広告露出する方が、生活者の反応を得やすい状況があります。
ディスプレイ広告の改善
広告媒体側での調整は「セグメントを変える」「入札単価を調整する」というアクションになります。でも、これでは大きく成果を改善することはできません。なぜなら、広告の反応は『露出先×クリエイティブ』で決まり、人の注意を惹くためにはクリエイティブがより重要だからです。
なので、ディスプレイ広告が配信されだしたら運用担当者の仕事は、クリエイティブを見直していくことが中心になります。常に複数本入稿してテストをするのですが、より大きく反応を得られるクリエイティブパターンは無いか考え、手配していくことがとても大切です。
媒体によって適切な入稿クリエイティブ本数が異なりますが、GDNやYDNであれば3本〜5本を目安に入稿すればまず大丈夫です。ニュースアプリなどクリエイティブの反応が落ちやすいメディアに関しては、10本以上同時に走らせながら常にPDCAを回すことになりますが、初心者運用者はそこまで手を出さなくても問題ないので、まずはGDNとYDNで成果獲得を目指してください。
あと、最低限ターゲティング配信用のクリエイティブとリターゲティング配信用のクリエイティブとは必ず分けてください。なぜなら、初めて接触する人と何回か会ったことのある人とでは、明らかに相手の興味が惹かれるポイントや求めている情報が違うからです。
広告の運用ひとつとっても「誰に・何を・どのように」を意識しながら運用していくと、改善のための仮説立てをしやすくなります。
是非まずは最低限の運用にしっかりと取り組んでみてください!
p.s.
ディスプレイ広告の作り方についてはまた別の記事でご紹介できればと思います。
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