マーケティングの丸投げサービスの罠

「どやねん?」と思うサービスがありました。

SOLDOUTという中小・ベンチャー向けにリスティング運用代行をしている会社が新しく始めるサービスです。

広告費・制作費も全額負担する 完全成功報酬型のEC受託「ネット販売代行サービス」です。事業主側は商品発送などのバックヤード業務を行うだけで、収益を上げていけるというモデルのサービスです。

一見、WEBマーケティングがよくわからない、手がつけられない中小規模の事業主にとって、理にかなっているように見えるサービスだと思います。

でも僕はまったくそうは思いませんでした。なぜなら、マーケティングにおける顧客とのコミュニケーションも外部業者に丸投げすることになるからです。広告で届けるメッセージ、LPで届けるコンテンツ、顧客との関係構築、これら全てを自社でやらないということです。

それってその商売をする意味があるのでしょうか?自分たちのビジネスを、ただ利益を得るためだけオペレーション、金融投資のような考え方をしているのであれば、それで良いと思います。

でも、商売の基本であり真髄は顧客との関係構築と僕は考えています。商品は価値を媒介する箱に過ぎません。顧客が価値を得るのは、商品によってもたらされる結果です。

そこには商品というモノやサービスを通して届けたい、事業主側の想いが必ずあるはずです。特に誰かが作った商品を仕入れて売る、ということではなく、自分たちで商品を作っている企業であれば、商品への思い入れ、顧客への思い入れが必ずあるはずです。

成果報酬型サービスの罠

成果報酬型というと、クライアントにとっても効率的なサービスだと思われがちです。「結果が出なければ払わなくていいんでしょ?クライアント側は損しないからいいんじゃないの?成果がでなければサービス提供側は儲からないので、一生懸命やるはずだし。」と思いますよね?

でも、成果が出て初めて成果と報酬の価値交換がされるということは、サービス提供側は何の責任も負わなくて良いということになります。

例えば6ヶ月実施して、目立った成果が得られなかったとします。赤字にはならないのでそれでOKかというとそうではありません。

その時あなたは最も大切な時間を失っています。人にとっても企業にとっても1番大事なのは時間です。投資が失敗したとしてもお金はまた作れます。時間は取り戻せません。

また、成果報酬型にすることで、実際の作業内容自体は多少ブラックボックス化されます。それにより、本来良くも悪くもなんらかの結果を得るための投資が、結果何も残らないドブにお金を捨てる行為になってしまう可能性があります。

自分たちで考えた仮説検証によって得られた結果は、成果に結びつかなかったとしてもノウハウも蓄積されることで、投資した価値があります。次は成功の確度が高まるからです。

成果が出ていなくても、サービス事業社側には非はありません。クライアントが「全然売れてないからもっとがんばってよ」と言ったところで、「はい、これこれこうやってます」という返事をもらって終わると思います。なぜならそれ以上詰め寄る筋合いが無いからです。クライアント側はサービス事業社の工数に対しては報酬を支払っていないので。

もちろん施策のひとつとして利用する分には是非活用すべきです。でも、マーケティングという事業全体に関わる部分に対して利用することはよろしくないということです。

クライアント企業が取り組むべきは、パートナー企業に対して支払う報酬に見合う適切なサービスを提供させることです。そのためには、マーケティングの体系的な理解、目標達成するための方法の理解、パートナー企業の機能の定義が必要です。

商品自体の価値では顧客は価値を感じない

商品づくりに専念できるから、メーカーとしては都合がいいのではないか?と思われるかもしれません。でもそれは間違いです。顧客は商品そのものが欲しいのではなく、それによって得られる結果が欲しいからです。

得られる結果というのは、何も商品だけによるものではないと思います。

なぜ、ものを入れて持ち運ぶための道具であるかばんに、100万円のものもあれば1000円のものもあるのか?商品のもつ機能だけでいえば、得られる結果は同じものです。でも、そこには企業のマーケティングによる付加価値があるため、価格の差がでます。

「ブランディング」という言葉で説明されますが、つまりは商品の価値を高めるためのマーケティングが為された結果です。

広告での見せ方、販売の仕方、商品の提供の仕方、購買に繋がるマーケティングプロセスにおいて、企業の価値観を伝えるためのコミュニケーションの設計がされています。

企業の思想や姿勢は他社にはとても体現できるものではありません。外注先はマーケティングのプロではなく、あくまでマーケティング施策のプロだという認識でパートナー企業と取り組むことをおすすめします。

参考:http://www.sold-out.co.jp/news/press/post-6075/

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