マーケティング駆け込み寺「陶板壁材」

  1. 事例

マーケティング駆け込み寺。今回のご相談はこちら。

【経緯】

粘土瓦ではトップメーカーですが、近年市場規模(新築住宅着工数)の減少と金属屋根などの他素材メーカーがシェアを拡大し、脅威となっておりました。この様な状況により、新規分野を開拓すべく約5年前に「陶板壁材(瓦製造技術を生かした)」をリリースしました。

陶板壁材は、主に住宅の外装壁材や住宅・建物の内装壁材として利用できます。陶板壁材は一般的な壁材と比べ「高耐久」で、他の屋根材ですと「15年」毎に壁の塗替えが必要になりますが、弊社の陶板壁材は塗替え不要です。

一方デメリットとして「価格が高い」や「サイディングボードと比較し重い」です。サイディングボートは、壁材の中でも中間的な価格帯の商品ですが、陶板壁材はその上の「中の上」位を狙っております。

【現状】

当社で生産する瓦は住宅の屋根材としての知名度は高く、多くの大手ハウスメーカーでも採用していただいておりますが、陶板壁材は「採用実績が少なく」、大手ハウスメーカーは「施工性・価格」を重視するため意向に沿わず採用が困難となっております。そのため、営業活動先は「注文住宅や店舗・社屋等他と差別化でき比較的高価な物件」を扱う設計事務所」中心に活動しております。

【課題】

低価格住宅での採用は難しく、中高級価格帯の住宅/店舗/社屋/マンション等の内装壁材への採用を目指しているが、商品の認知度が低くそのどうな手法でPRしていけば良いか分からない。テレビCM等で個人に広く訴える広告もありますが、費用が掛かり効果が分かり辛いため、低価格で住宅購入層にも訴求したい。

一方、プロ向けには設計事務所や住宅会社の設計士やデザイナーを中心にピンポイントで広告したい。製品自体が、住宅や建物の一部品であり、単独のPRは難しい。

【期待】

製品自体は設計士やデザイナーからの受けが良く、有名な建物への採用や知名度の広がりで売上は伸びていけると考えております

新規事業で市場開拓していく方法

すごくよい商品だなと思いました。

その理由は、高品質・高価格なところです。大手企業でなければ低価格で大量販売するような事業展開はできません。高価格帯であれば、企業の体制が小規模でも十分な事業収益を上げていけます。なので、多くの企業が高価格帯の商品を販売すべきです。

でもそのためには、高価格な理由が必要になります。その点、今回ご相談いただいている商品は、「高耐久」という品質の良さがあります。また、瓦製造トップメーカーの独自技術も持ち合わせているので、高品質が担保されています。

マーケティングはテコなので、商品自体の価値がなければ売れる状況を作ることはできません。

ターゲットを誰にするか?

まず誰に買ってもらうか?ですが、これもよく考察されていると思います。建物の部材なので顧客は企業です。でも最終的にそれを選ぶのは一般生活者です。なので、生活者に「陶板壁材」をアピールして選んでもらおうというアプローチを考えられがちですが、それは市場開拓の近道ではありません。

なぜなら、ただでさえ情報を届けるのが難しい生活者に、企業の都合で発信した情報を届けることは至難の技だからです。ご相談者もすでにお分かりのように、大規模な広告の半分以上は無駄なものに終わります。

まず攻めるべきは、それを販売する事業者です。なので、高単価な部材を使った建物を作る人が適任者です。「注文住宅や店舗・社屋等他と差別化でき比較的高価な物件」を扱う設計事務所」をターゲットにしているのは間違いのない戦略です。

なので、低価格で大衆に向けて販売していくのは今の段階では考えなくて良いです。

アプローチはどうするか?

彼らにどうアプローチすればよいかというところを課題として挙げられていますが、BtoB企業のマーケティングはとてもシンプルです。なぜなら、ターゲットのリストをすぐに手に入れられるからです。リストがあればダイレクトにアプローチできます。

webで「注文住宅」「オフィス設計」「店舗設計」「住宅設計」などのワードを検索すれば、それを請け負う会社が広告を出していますし、企業名簿などを利用すれば一気にターゲットリストを手に入れられると思います。

ターゲットリストへのアプローチ方法として、電話・メール・FAX・手紙などがあります。どれも単純な手法ですが、今すぐにできる方法です。

なぜ「陶板壁材」を勧めているのかを伝えることで、取り扱い企業は増やしていけると思います。何を伝えるかが肝心で、エンドユーザーにとってのベネフィット(耐久性が高いので塗り替えの必要がない/見た目がイケてる/こだわりのある人だと思われる等)、取り扱い企業にとってのベネフィット(よい商品を顧客に提供できる/収益性が高い/珍しい部材を提案することで専門性を感じてもらえる等)を示し、なぜその価値を提供できるのか(瓦製造トップメーカーの技術力等)を伝えて信用してもらえれば買ってもらえます。

導入を後押しするマーケティング施策

ここまではどちらかというとセールス寄りの話ですが、マーケティングを活用するならさらにコンテンツ作りに取り組みます。

この商品の場合、取り扱ってもらうためのコンテンツになり得るのは、ご相談者も挙げられている「製品自体は設計士やデザイナーからの受けが良く、有名な建物への採用や知名度の広がり」があるというところです。

具体的には、利用者の声を集めてそれを見込み客に対して見せることです。使ったことのない商品に対して人は消極的になります。しかも高い買い物になると、より失敗したくないと感じます。その不安を無くすために、同業から評価されているという情報を提供してあげます。

専門的な商品であればあるほど、専門家からの意見が強く影響します。なので、顧客の声として陶板壁材の利用者の声を集めて、安心できる商品や取引相手だということ、自社の収益化に貢献できる商品であるということをわかってもらいます。

セールスを後押しするマーケティング施策

次に、取引先の仕事をしやすくするコンテンツの提供です。部材など取引先の先に最終利用者がいるような商品の場合、取引先は販売代理店だという見方ができます。なので、販売代理店に武器を渡すことで、彼らがセールスしやすい状況を作ってあげることがメーカー側のマーケティング活動になります。

そのための武器として、エンドユーザーが求めている「高級感やイケてる家・店舗・オフィス」を表現できる事例を集めます。実際に完成した住宅や店舗やオフィスや建物などの写真や、その施設を利用している人のコメントなどです。

そのコンテンツがあれば、設計事務所が顧客に提案する時の武器になります。SNSを利用したり、陶板壁材を利用した話題作りをしたりしてエンドユーザーへその存在を届けることも考えられなくはないですがかなり遠回りになります。

仮にそういうアプローチによって、陶板壁材を知ってもらえたとしても、実際に住宅や店舗やオフィスなどを作る時に提案をもらえなければ意味がありません。陶板壁材のことはすぐに忘れます。たまたま今、設計中な人がいたら「これいいかも!」と思って選んでくれる人もいるかもしれませんが、宝くじに当たるのを待ち望んでいるのとなんら変わらないと思います。

BtoBの場合はまず最終利用者へ販売する人が、セールスしやすい状況を作るための武器を用意してあげることが大切です。結局のところセールス力の強い商品が売れますから。

起死回生の一手が欲しくなりますが、地味で面倒なことにテマとヒマをかけて着実に進めていくのが成功への近道です。

PRやプロモーションを活用した認知拡大は、成功しても失敗しても事業に影響がないくらい十分に収益基盤が作れた段階で行うのが良いです。

まとめ(アクションプラン)

・ターゲット企業のリストを集める

・リストに対してダイレクトアプローチをする

・アプローチのためのツールを用意する(LP/トークスクリプト/営業資料等)

・ツールを強化するコンテンツを用意する(顧客の声<設計士/エンドユーザー>)

実践によってしか結果は得られません。あとは、アクションの量を増やし、その中でPDCAを回していくことがゴールへの近道になります。

p.s.

ついででやっておくなら、事例写真を貯めていけるInstagramアカウント、Pintarestアカウントを運用するくらいはやっておいても良いかと思います。

企業リストで接触できないデザイナーなどがSNSをきっかけに知ってくれる可能性が高いからです。

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平岡 大輔

プロモーション領域の端から端までを熟知しているバランス型マーケター。
総合広告会社でTVCM中心にマスメディアのプランニングに従事。
web系ベンチャー企業でクリエイティブ事業部の責任者として多数のwebサイト開発に取り組みながら、EC企業のマーケティングコンサルタントとしても活躍。D2C企業の経営に参画し、年間5億円の広告費を使いながら理論と実践のPDCAを回している。マーケティングのプランニングからディレクションまでを得意領域としており、チームビルディング・チームマネジメントにも精通。

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