今日は広告はメディア視点だけで考えてはダメだというお話です。
クライアントのマーケティング環境の整備をするため、広告代理店や広告運用会社の定例会に同席して、パートナー企業のコントロールをお手伝いしています。
彼らが運用方法について説明をするときに「質の高いユーザーを集めるために、●●というメディアに出稿します。」「質の高いユーザーに向けて配信をするために、●●カテゴリに向けて配信を強めます。」などの話をよくされます。
「質の良いユーザー」への違和感
ここで言う「質の良い」とは、「CVしやすいユーザー」と置き換えることができるのですが、果たしてWEB上で得たユーザー属性や行動履歴だけで、CVしやすいユーザーを特定することはできるのでしょうか?(リターゲティングについては興味喚起したユーザーへのリテンションになるため議論に含みません)
ターゲティング配信によって反応の良いユーザーに向けて広告することができるので、クリック率が高まるのは間違いないと思いますが、クリックした時点でCVするかどうかは計り知れません。
もしかしたら本当にCVしやすいユーザーというものがいて、的確にそのユーザーを捕まえることができているのかもしれませんが、それをターゲティング配信の手柄とするのは乱暴だと思っています。
なぜなら、広告だけではユーザーはなにもわからないからです。
検索連動広告以外のプッシュ型広告において広告は最初のひと声に過ぎず、より興味を惹かれ、説得され、購入を決断するのは、広告クリック後のランディングページであり、その他外部サイトでの比較材料によるものだからです。
なので、広告配信側の人間が「質の良いユーザー」という場合は、「広告に反応しやすいユーザー」の意味として扱うのが正しいのではないかと考えています。
ただこれにも落とし穴があります。それは、”ターゲティング配信によって本当に効果的・効率的な反応しやすいユーザーへの広告ができているのか?”ということです。
これは何かと言うと、ターゲティング配信をすることによって通常より反応しやすくなったものの(CTR↑)、配信対象を絞ったことによって配信コストが高くなったことで(CPM↑)、LPへの総客数が減り(Clicks↓)、結果的に送客コストが高くなってしまう現象が起こっているからです(CPC↑)。
<イメージ>
●通常配信
CPM20円 CTR0.05% 予算1,000円 →50,000imps 25click →CPC40円
●ターゲティング配信
CPM50円 CTR0.1% 予算1,000円 →20,000imps 20click →CPC50円
多くの場合は、顧客を獲得するために広告をするのでCV至上主義に陥ってしまうことは理解できますが、マーケティングのプロセス(広告>コンテンツ/オファー(LP)>フォロー)で考えた時に、各施策の役割を明確にして、それぞれで何を達成していくべきかを考える必要があります。
ユーザーを個別に特定できる情報が増えてきたため、その活用にばかり目がいきがちですが、マーケティングのプロセスにおける広告の役割は、如何に安いコストで大量のユーザーを送客するかに集約されます。
広告はメディアでセグメントし、クリエイティブでターゲッティングを行う
「反応=メディア×クリエイティブ」です。広告を目にしたユーザーが何によって反応するかというと、そこで表現されているメッセージやビジュアルです。これは原理原則で今後も変わることはありません。※ここのクリエイティブとは広告意匠の意味で使用
自分の興味ないものであればクリックしないですし、興味がある分野の商品でもそこで伝えられている内容に惹かれなければクリックはしません。
最終的にユーザーの興味の有る無しを決定づけるのはクリエイティブです。
「反応=メディア×クリエイティブ」。これを意識して広告していかなければ、配信コストをかけずに誘引できているユーザーに対しても、配信時点でコストを上げてしまっているために、最終的な獲得コストの高騰を招いてしまいます。
広告はメディアでセグメントし、クリエイティブでターゲティングを行う(ふるいにかける)という考え方で送客コストを最大限抑えることで、最終的な獲得コストを下げることができるのです。
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